895人が本棚に入れています
本棚に追加
彼の直感はやはり正しかったようで、その“何か”は、すぐやって来た。
「課長、秘書課から伝言です。
社長室にすぐに来るようにと」
水野女史が受話器を置いた。
__間違いない、コレだ__
大神は席を立つと、すぐに社長室へと向かった。
道すがら、彼は最近の記憶を辿る。
__体何がまずかったのか…
改良型製品の評判は良いはずだ。こないだの接待だって上手くいったし、レセプションもまずまずだった__
一段と足を早め、ちょうどやって来たエレベーターに乗り込んだ。
考え事に集中している彼は、乗り合わせたクリーン業者のおばちゃんがポッと頬を赤らめたのにも気付かない。
はっ、まかさあれか。
こないだの飲み会で、一発芸がスベった件!__
パチン。
彼が指を鳴らした途端、8階のランプが光った。
バイバイと手を振るオバチャンに抜け目なく手を振り返し、エレベーターを降りると、社長室はすぐそこだ。
言い訳を考えながら、扉を2回ノックする。
「業務課の大神です。入ります」
最初のコメントを投稿しよう!