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と、三鷹社長がのんびりした様子で話を切り出した始めた。
「大神君、君は実によくやってくれている」
「ありがとうございます!」
えーい、出たとこ勝負だ。
彼はいかにも嬉しそうに、はつらつと45度に頭を下げた。
「実はね。
君の業績に兼ねてから注目していた役員から今朝、君に北九州支社を任せてはどうかという話がでたんだよ」
「え」
マジか!?
大神は耳を疑った。
彼はこの冬で30になる。この年齢で支社長なんて…先例のない快挙だ。
うまくやれば、この先役員だって夢じゃない。
そうか、やっぱりアレは、いい事がある前触れだったんだ!
「そ、そんな大役、私のような者に務まるわけがありません」
込み上げる喜びを隠しきれない。喜びに震える声を懸命に押さえながら、大神はそれを固辞してみせた。
と、ソファから副社長が立ち上がり、ふくよかな顔に満面の笑みを浮かべながら、大神の肩を叩いた。
「ハハハ、謙遜するな。
確かに。まだ若すぎるのではないか、という意見もあったんだがね。
社長の鶴の一声だ。決まりだよ、大神君」
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