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「し、しかし…
いいえ、ありがとうございます。こうなったからには誠心誠意、務めさせて…」
3度断り、さあyesの返事、という時だ。
「まあ、待ちたまえ。
……人事部長?」
社長が人事部長を呼んだ。
すると、控えていた人事部長が、神経質そうに血走った目をギョロりと大神に向けた。
「大神君、あのね。
ウチの人事の内規のことなんだけど、知ってる?」
「あ、はいっ、いいえ…済みません」
彼はゴホンと咳払いをした。
「あのね。支社長は、単身赴任が許されないの。
必ずご家族と行ってもらう事になるんだよ。独身もダメ。地域に密着してもらわないといけないから、ね?」
「はあ…」
そんなん、あったっけ?
「で、君だよ、大神君。
まだ独身だったよね?決まった相手、いないの?」
三鷹社長は、なに食わぬ顔で尋ねた。
一瞬、ほわっとあの子を思い浮かべ、そして慌てて否定した。
「い、いえ、特には」
「……そうだっけ?確か…」
社長は少し不満そうな顔をして、それから隣の松嶋秘書にちらりと目をやった。
「あ、いや…それはそのっ」
そうだった。
俺は表向き、松嶋の交際相手ということになっている。実際は、社長のダミーなのだが。
社長が得心したようにニッコリ笑った。
「な、丁度いいだろう?
この機会に二人、結婚しちゃいなさい」
「え…」
ええええええエエエっ??
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