3 究極の2択

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 すると、彼女がようやく雑誌から顔を上げた。  大神はホッと息をつく。   「な?聡明な君ならきっと解ってくれると思っていたよ、さあ、今からでも三鷹社長に…」 「……っさい」 「エ?」  次の瞬間、彼女は大神の耳をあり得ないほどギュウッと引っ張った。 「いっっ…?!」  艶然と微笑を浮かべながら、氷のような声でいい放つ。   「『ウルサイ』って言ったの。  いい?あのヒトが生んでいいって言ってくれてるのよ。  そこを上手くやるのは、貴方の役目でしょう? キレ者の大神くん。  だから口の回る男はキライなのよ」  思い切り振りを付けて耳を放すと、彼女はフウッと息を吐いた。 「大体ね。  私、子供には最初っから事情を話すつもりだし。 まあ、貴方の面子を立てて、世間体だけは『いい妻』を演じてあげる」  松嶋は、大神に向かって優雅に微笑んでみせた。 「それからね。言っとくけど私、北九州に一緒に行くつもりなんてないから。  アンタもその方が得でしょ?  今までの遊びたい放題、やりたい放題の生活スタイルを続けられるんだから」 「そんな、俺は…」  言いかけた大神を遮って、彼女はビシッと指を突きつけた。 「あと_____  たとえ偽装結婚するにしても、これだけは変わらないわ。私に手ェ出したら……… ぶっコロすからね」 「ひ…」 「じゃあね、お休みなさ~い。  さあ、赤ちゃん。大きくなるのよ~♪」  ダブルベッドのど真ん中、いっぱいのスペースを使って、松嶋はスヤスヤと寝息を立て始めた。  それを見て、大神はガックリとシャワールームに向かう。  ダメだ…  愛する男の子供を生もうとする女の 本能に、何を言っても勝てそうにない。  それにやっぱり。  俺はこの女が、大の苦手だ。
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