プロローグ

2/2
前へ
/76ページ
次へ
 __深夜1時。  社長第1秘書、松嶋七緒のマンション。  またの名を社長別宅。  シュッ、シュッ…  最上階のクールなインテリアの落ち着いた空間に、規則正しい音が聞こえる。  ドレッサーに腰掛け、部屋の主、七緒が熱心にネイルを磨いている音だ。  さっきまでの乱れなどまるでなかったかのように、彼女は静かに自分の爪先だけを見つめていた。    そのすぐ隣のベッドには、これまた少し前まで、あれほど情熱的に彼女に愛を注いでいたのとは別人のように、部下の報告書(レポート)を眺める三鷹等社長。  今晩中にカタをつけるつもりなのか、彼は傍らに山ほど積まれたそれを熱心に読みふけっていた。    ふと、七緒が手を止め、彼を振り返った。 「ねぇ、社長?」 「何だい?松嶋くん」   「出来ちゃった♪」 「え…」
/76ページ

最初のコメントを投稿しよう!

896人が本棚に入れています
本棚に追加