1 小さな幸せ

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 大神はその半分を一口で齧り取ると、むっと顔をしかめた。 「うっわ甘っ。何だよこれ、餡に…」 「バターがたっぷり!美味しいでしょ、ね? 餡とバターのハーモニーに、私今、すっかり嵌まっちゃってまして」  熱く語りはじめた彼女に、大神は呆れ果てた。 「コッペパンに餡にバターがたっぷり…  炭水化物だらけじゃねぇか。  折角走ってカロリー減らしたのに、こんなもん食ってたら、全く意味がないだろうが」 「うぐっ…」 「いいか?もしお前が、本気でダイエットしたいんならな」  言葉を詰まらせながらも、もう取られないようにと、急いでそれを平らげている彼女。  その耳元で、大神は会社同様、怒鳴り付けた。 「ちゃんとカロリー計算して!  栄養バランスを考えた朝飯を!  自分で作って持ってこい!」 「ううっ…ごもっともです…」  う、しまった。  すっかりショボくれてしまった彼女に、彼はすかさずフォローを入れた。 「まあな…人はそれぞれだ。  俺は、食い物は旨そうに食う方が好きだし、ちょっとくらいふっくらしてた方が… す、好きだけどな」  抱き心地が良いからな。
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