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《お疲れ様です。いよいよボクもクビ切り確定のようですわ。
それはさておき、今週末ボクの知り合いが主催する、ハケン切り撤回のデモが行われるんですが…
良ければ入川さんも参加しませんか?》
「…あいつ」
一通りメールに目を通した入川は、溜め息混じりに苦笑を浮かべた。
ほんの二ヶ月前までは、勝手知ったる仲間だと思ってた彼の意外とも言えるこの文面は、まさに今の風潮とリンクした内容であり、この暗い世情に染まりつつあるらしい彼の事が心配になる反面、何とも言えない気持ちが生じ始めたのも確かだった。
共にしょーも無い事で笑い合い、グダグダと酒を飲みながら語り合い、それがあればこそ頑張れたという、大切な楽園での思い出が穢れる様な気がしたし、そもそも彼がデモとかやるような気真面目な奴なら、仲間だと思える事もなかっただろう。
それに何よりだ。
今まさにお楽しみの前兆状態だってのに、久々にも関わらず、こんな想定外のメールで水を差してくれた西島にイラっときたのは確かだが。
それでも…くだらない。と切り捨てられないのは、やはり仲間だからなのだと入川の顔にふっと笑みが浮かぶ。
「ま、返信はラブホ入ってからでいっか」
そう胸中に独りごちつつ、再び妄想モードのスイッチを入れた入川は、ギラつく輝きを放つネオンの光を浴びながら、目的地のラブホテルへと向かった。
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