本屋さんが、出る

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そのコンビニには、幽霊が出るという噂があった。 「まさか」と思いながら、近所の俺は新しくオープンしたその店を利用していたが、ある日、ふとその店で週刊誌を立ち読みしていたら、はたきを持った白髪の爺さんが「立ち読み禁止」と注意してきて、俺はぎょっとした。その爺さんは数年前に死んだはずの、このコンビニができる前に建っていた本屋さんの店主だったからである。 おいおい、死んで本屋がコンビニになっても、まだ立ち読みの注意を続けたいのかよ、この爺さんは。俺が週刊誌を置いて、雑誌の並ぶ棚から離れると、爺さんはスッと消えた。 怖くはなかった。 むしろ、久しぶりに、あの爺さんに注意されて何となく懐かしくて、うれしくなった。
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