大学四方山怪談

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大学時代の話。 私が通っていた大学は、すぐ近くに旧日本軍の弾薬庫の跡地がある。 太平洋戦争中のある日、運搬中の事故で爆弾が爆発し、民間人含む20人程が犠牲になった。跡地にはマンションや団地が立ち並んでいるが、その事故の犠牲者を慰める慰霊碑だけはそのまま残っている。 そのせいか、大学にもいくつか怪談話があった。 私が通っていた大学には、全ての棟にエレベーターがある。壁面には鏡が嵌め込まれていたのだが、唯一一番端の棟のエレベーターだけその鏡が布で覆われていた。 曰く、そのエレベーターの鏡には、顔の崩れた白い服の女が時たま映る。あまりの訴えの多さに、そこのエレベーターだけ鏡を隠すようになったという。 私は一度だけその鏡を見たことがあるが、特に何の変鉄もない鏡だった。しかし翌日見に行くと、また元の通り厳重に隠されていたのが印象に残っている。 ちょうどその前後の時期に、下宿生の間で白い服の女の目撃談が囁かれていた。夜の窓辺に佇んでいた女に覗き込まれた学生もいれば、カーテンの後ろに隠れていて、目が合うと消えたりと色々な体験談を聞いた。もしかすると、もうエレベーターには女は居ないのかもしれない。 この時期が来るとふと思い出し、懐かしくなる。 了
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