笑う闇

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飲み友達に聞いた話。 詳細は話せないようだが、学生時代に彼はとある施設に数日間泊まり込んで、施設管理のアルバイトをしていたそうだ。 その建物の裏手には、今はもう閉鎖した廃病院が、建物だけ残っていた。元々は精神科の病院だったそうだが、とある不正が明るみに出て閉鎖してしまったらしい。特に人死にが出たわけではないとのことなので、そちらは割愛しておく。 建物裏の廃病院に関連してかは知らないが、彼は奇妙な体験をしたそうだ。 ある日の夜、彼はもう寝ようとシャワーを浴び、電気を消して、布団に横になって目を瞑っていた。寝る前にビールをあおっていたこともあり、すっと眠りについたはいいのだが、夜中にふと目が覚めた。 その時彼の顔の前15cmほどに、黒いもやのようなものが浮かんでいたのが見えた。暗闇の中でもはっきり見えるほど、それは黒く、暗かったという。 寝ぼけているのかなと思い、そのままぼーっとしていると、確かにその影がニヤッ、と笑ったような気がした。 かと思うと、白い細い腕が二本、にゅっと飛び出し、彼の首をぐっと絞め始めたそうだ。 必死で振りほどこうともがいたが、まるでゴムのように腕がしなって振りほどけない。咄嗟に掴んだ枕元の目覚まし時計を掴んで、思いっきり腕に叩きつけると、腕が離れた。 彼はそのまますっと脱力し、眠っていたのか気絶していたのか、気がついたら朝になっていた。 薄れゆく意識の中、まるで錆び付いた車イスを漕ぐような音が、ぎぃーこ、ぎぃーこ、とベッドから遠ざかっていくのが聞こえたという。 あれ以来寝るときは近くに必ず武器になるようなものを置いてるんだ、と、彼はビール片手に笑っていた。 了
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