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昔、まだ僕が小学生の頃の話だ。 僕は父に聞いたことがある。 『海の水はどうしてしょっぱいの?』 その時父は昔話を聞かせてくれたんだ。 むかしむかしあるところに…、って。 途中の話は曖昧にしか覚えていないけど、最後は、こんな結末だった。 『塩を吹き出す臼は、今でも海の中で塩を出し続けています、とさ』 子供の僕は、もちろんその昔話を信じた。 この海のどこかに、沈められた臼があって、その臼から塩が出続けている。 だから、海の水はしょっぱいのだと。 しかし、大人になった僕は、それがただの昔話だと気づいた。 そんな臼があるはずない、って。 けれど、漠然と感じていたんだ。 臼はないけれど、きっと深海のどこかに塩を吹き出す場所があるって。 だから、海の水はしょっぱいのだと。 ほら、テレビでたまに見る、海の中で溶岩が吹き出していたり、熱湯が吹き出している、という映像。 あれの塩バージョンがあるんだ、ってずっと当たり前のように思っていた。 それなのに… 知っているかい? どうして、海の水はしょっぱいのか、って。 知らないちびっ子のために、今から僕が教えてあげるからね。
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