キャッチボールが変えた運命

5/9
前へ
/134ページ
次へ
  「錦戸!」 二限目の後には中休みがある。 軽く用を足して教室に戻ろうとしていた所で、俺はまた飯島に捕まった。 「飯島…」 「悪い!今日また、帰りが遅くなりそうなんだ。」 「へぇ、忙しいんだな。」 「おうっ。其れで…」 「家族じゃないんだ、好きにしてくれ。」 …何て言い種だ。 此の時の俺は、完全に【参っていた】。 幾日か蓄積された寝不足の限界もあったんだろうと思う。 “突き放すなら、今しか無い” そんな思考に支配されていた。 「…錦戸」 「鍵は持ってるんだろ?」 「いや、其れが…」 俺は敢えて訊ねた。 如何云う訳か、初日から俺に心を許し切っている飯島は、【鍵を持って寮を出る事を怠り続けている】。 つまり、今後こいつとの間に主導権を持つとすれば、好機は今しか無いのだ。 俺は有りっ丈の言葉で飯島を捲し立てた。 「お前が何処に行こうが、俺には関係の無い事だ。一々報告しないでくれ。其の時間に付き合って、如何して俺がわざわざ【将来に向けて勉学に励んでいる時間を割いて】毎日々々お前の為にあの部屋の鍵を開けなければならない?」  
/134ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加