生まれたての赤子のように

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  こいつはやはり、あの飯島だった。 名前を呼ばれた時、もしこいつが本当に飯島本人なら絶対に俺を恨んでいるはずだと思った。 結果的に彼の父親は助けられなかったし、挙げ句に命こそ救われたが自分の記憶を全て喪ってしまったのだ。 しかも其の記憶喪失は、世間一般では【手術が失敗に終わった】という事で理由付けられていたから 俺も、俺の家族も。 飯島にしてみれば許せない存在なのだろうと思い込んでいた。 だから今日を迎える三日前から 俺は余り眠れなかった。 エブリスタ学園には寮があるのだが 男子寮は二人か三人が一組で一部屋を与えられている。 組み合わせは全くのランダム。 にも関わらず俺は、入学式当日、担任から渡された一枚の紙切れを見て「呪われているのだろうか」と感じた。 大体、呪いなんてものは一切信じていないのに この時はただ、紙切れに印字された【飯島久介】の四文字が怖かった。  
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