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だから、この質問はしないことに決めた。 だって、パパのことは大好きだから。 でも、あの女は嫌い。 水産会社の社長の娘。将来はパパがその会社の社長になるらしい。 パパも少しずつ海の臭いになってきたのがたまらなく悲しかった。 あの農村に帰りたい。 キラキラと金色に輝く麦畑が一面広がるあの場所に。 「本当に困った子だ」 「仕方ないわよ。それだけ、お母さんが大好きだったのね」 夜中にトイレに起きてみると、パパとあの女が話していた。 パパはお酒を飲んでいた。昔は少しも飲まなかったのに。 きっとあの女のせいだ。 海の女。大嫌いな海の女。 「りおちゃん、遊ぼう」 学校で同じ組のなつきちゃんが呼びにきた。 この大嫌いな海の町で、たった一人だけ好きなお友だち。 なつきちゃんは、都会の生まれで、私と同じ日に転校してきた。 すぐに仲良くなった。 なつきちゃんは海の臭いがしないから。 「やったー、また同じクラスだね、なつき」 「よろしくね、りお」 中学校のクラス編成を見て、手を取り合って喜ぶ私となつき。 私たちは中学生になった。 二人は親友だ。 この嫌な場所で、たった一人、海の臭いがしない人。たった一人、何でも話せる人。たった一人、私の苦しみを理解してくれる人。     
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