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「じゃあ、あっちでもがんばってな。俺、何もできないけど、話くらいは聞けるから。必要だったら飛んで行くからさ」
私は、ただ黙って頷いた。
何と答えていいかわからなかった。
「電車の時間あるから……行くね」
「ああ」
福井くんと別れ、改札をくぐり抜ける。
私は電車に乗り、車窓の向こうに見える福井くんに小さく手を振った。
電車は走り出し、大嫌いな海の町から私を連れ出した。
「海なんか……嫌い」
気持ち悪い潮の臭い。耳障りな潮騒。べたつく塩分たっぷりの風。天気が良ければギラギラ眩しくて、天気が悪ければ暗い鉛色をしている。
でも……
もしかしたら、少しだけ……好きになるかもしれない。
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