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バイトで貯めたお金を使って買ったデジタルカメラを片手に、私は今日も町を行く。
六月十日、本日は晴天なり。絶好のお散歩日和だ。道路を快調に飛ばす車は気持ちよさそうで、欠伸をしているお爺さんが連れている柴犬も楽しそうだ。
ただ家電量販店の冷房が効いていたのか、外の気温が高く感じて、若干額に汗が浮かんだ。これからさら暑くなると思うと、少し気が重くなる。
まあ、そんな先のことはいいか。今の私の気分は有頂天だ。念願のカメラは手に入ったし、バイトも休みだし! きっといい一日になるに違いない。ジャーナリストを目指しているわけじゃないけれど、今の私ならスクープを撮れる気がする。あくまで、気だけ。
踊りだしたくなる気持ちを抑えながら、赤無町(アカナシチョウ)を歩き回る。別に大きく変わったところはない町だけど、ここから少し歩けば山があるし、そこの風景でも撮ってみようかなあ。
山と言えば、山向こうには赤鉄町って町がある。昔は鍛冶が盛んで、赤い鉄がたくさんあったからそういう名前らしい。私の町が赤無っていうのは、その町から一番近くて、赤い鉄が前の町ではあったのに、この町では無くなったからって理由で付けられたんだっけか。
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