凪の海

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太平洋を望む、小さな田舎町。 私はここで生まれた。 特に変わったこともなく、他の人と同じように。 言ったら悪いけど、普通に成長してきた。 お父さんは漁師で毎朝早くに漁にでる。 私はそれに合わせて起き、朝ごはんを作るのが日課だ。 「いつも助かるよ、葉月。悪いね。」 お父さんが言う。 「いいよ、これが私の日課だから!」 普通の女子高生みたいじゃないけれど、私はこれで満足。 「いってらっしゃい~!」 お父さんを見送ったら時間は3時。ここからもう一回寝る。 「……ふぁ~…。」 起きれば日が差している。 何時だろう……。 「って、もう7時じゃん!  お母さんと柊起こさないと!」 お母さんと柊を起こして朝食の準備をする。 お母さんは学校で事務として働いている。 柊は中学2年生、育ち盛り。 ご飯の量、また増やさないとな……。 「行ってきます~!」 学校に向かうのは、始業時間の40分前。学校までは10分もかからない。 なんでかというと、いつもの日課があるからだ。 通学路の途中、海凪神社にお参りする。 「どうか今日も安全に上手くいきますように。」 毎日ここにこないと、なんだか気持ちが落ち着かない。 毎日同じことを願う。 「今日もきてんのかよ、葉月。」 何処かからか声がする。 振り向くと後ろに同じクラスの神薙海也(かんなぎ かいや)がいた。 「そういう海也こそ、毎日来てるよね!なにをお願いしてんの?毎日!」 「いやぁ……。あんま言いたくねえな…。 そういう葉月はなにをお願いしてるの?」 「お父さんの航海の安全と日々の安全だよ!」 一個だけ言わなかったけど、それくらいいいよね? 「バカ正直に言うバカが何処にいる…。 あ、ここにいるか。」 「そんなこと言わないの! …って時間ヤバイじゃん! 海也!学校行こう!!」 急いで通学路に戻る。 そして私と海也が学校に着けば、始業1分前だった。
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