飼っている者も又・・・

2/2
前へ
/6ページ
次へ
 小動物は寿命が短い。 それは心臓の鼓動数によるものだそうだ。 小さく作られた人間も同様だ。 だから進化も早い。  実際彼らの1年とはわれらの1日にも満たない。 だから電球を点灯させる方も慌ただしい。 「こいつら、天井で照らしてるこの電球を太陽だと思ってるんでしょうね」 研究員の一人が、スイッチをオフにしながらそう言った。 「まあ、彼らに太陽という概念があればの話だがな」 彼等を作成するにあたって、ある程度の知識はインプットされていた。 そのため、頭上に輝くそれを太陽と思い込んでいる。 「次の点灯は9時47分だぞ。間違えるなよ」 と言い残して、所長は部屋を出た。 「さて、私は本当の太陽でも拝みに行くかな」  そういって研究所を出た所長は空を仰いだ。 「あいつらは、あんな丸い物を太陽だなんて思っているのか」  つぶやいた所長の頭上には、細く、長く、真白に光る2本の光があった。 時々1本になったり、点滅する事もあるが、不思議に思ったことはない。 「これが本当の太陽だよ。12時間おきに光ったり消えたりするこれが」  そうつぶやく所長もまた、10km四方に囲まれた壁の中にいた。 それを遠くから観察する巨人もまたその壁の向こうに・・・
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加