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小動物は寿命が短い。
それは心臓の鼓動数によるものだそうだ。
小さく作られた人間も同様だ。
だから進化も早い。
実際彼らの1年とはわれらの1日にも満たない。
だから電球を点灯させる方も慌ただしい。
「こいつら、天井で照らしてるこの電球を太陽だと思ってるんでしょうね」
研究員の一人が、スイッチをオフにしながらそう言った。
「まあ、彼らに太陽という概念があればの話だがな」
彼等を作成するにあたって、ある程度の知識はインプットされていた。
そのため、頭上に輝くそれを太陽と思い込んでいる。
「次の点灯は9時47分だぞ。間違えるなよ」
と言い残して、所長は部屋を出た。
「さて、私は本当の太陽でも拝みに行くかな」
そういって研究所を出た所長は空を仰いだ。
「あいつらは、あんな丸い物を太陽だなんて思っているのか」
つぶやいた所長の頭上には、細く、長く、真白に光る2本の光があった。
時々1本になったり、点滅する事もあるが、不思議に思ったことはない。
「これが本当の太陽だよ。12時間おきに光ったり消えたりするこれが」
そうつぶやく所長もまた、10km四方に囲まれた壁の中にいた。
それを遠くから観察する巨人もまたその壁の向こうに・・・
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