第2章 悪魔の所業

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アトリエの社長室で プレジデントチェアの背もたれに身を預け まぶたを閉じたエリカは 軽い睡魔と格闘していた。 テーブルの上には 冷めた宅配のランチボックスが 封も切らずに放置されている。 昨夜の不愉快なパーティで 梨花から強烈な一発を食らったエリカは 怒りが収まらず、ノックアウト寸前になりながら 銀座の行きつけのワインバーで しこたま飲んでしまったのだ。 頭痛と胸のむかつきに苦しみながら なんとか出社してきたエリカだったが とてもじゃないが仕事にならない。 何か理由をつけて早退することにしよう。 そう考えた瞬間、エリカは深い眠りに落ちていった。 ・・・・・ 公園の池のほとりで ひとりで遊んでいるエリカに 何かが近づいてきた。 その何かは、健二や運転手の遠藤のような人ではなかった。 ゴツゴツとした手で、エリカの頭を撫でながら 薄気味悪い声で話しかけてきた。 「なにしてるんだい。」 「アリさんと遊んでるの。」 エリカがしゃがんでいる足元に たくさんのアリがうごめいている。 良く見ると、食べかけのキャンディーに アリたちが集っているのだ。 「大きいアリさんと、小さいアリさんがいるのよ。」 エリカは無邪気に答えた。 大きいアリは、クロオオアリ。 黒くて体長1センチほどあろうか? 一方、小さいアリは、オオズアリ。 赤みがかった茶色で体長は2ミリほど 「見ててね。」 そう言うと、エリカは小さいアリを摘んで 大きいアリの目の前に落とした。 するとクロオオアリは、その大きな鋭いアゴで オオズアリを掴むと真っ二つに引きちぎった。 「ねっ。大きいアリさんは、とても強いのよ。」 エリカは、無邪気にそいつに微笑みかけた。
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