#002

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「うまいか?」 「うん」  勢いよく箸を進めながらコクコクと頷くと、ビール片手に圭輔は満足そうに笑った。  いつもどおりの急な圭輔の呼び出し。  待ち合わせ場所は定番の駅前の噴水。  彼氏やら彼女らを待つ男女の中で男を待つというなんともいえない居心地の悪さを感じながら、 なんでこんな場所を指定するんだ、と現れない待ち人に悪態をつきつつ、 待ち合わせ十分前に到着してしまった自分の愚かさを悔やんだ。  しかも時計台の鐘が鳴るのと同時に颯爽と現れた圭輔のにやけ顔・・・・。  絶対確信犯だ、コノヤロウ。  どこかで自分の姿を見ていたに違いない。  ホント、嫌な男だ。 「ホラ、雅通。これ焦げるぞ」  イイ具合に焼けた肉を、皿にポンッと放り込まれる。  それを口に入れている間にも、圭輔はせっせと肉を焼き続けている。  なんつーか、餌付けされてる気分。  ここの焼肉屋だって、俺らがいくような安さが売りのチェーン店とは違って、こじんまりとした庶民的な店だ。  値段は意外にもリーズナブルだけど、なんていうか味が違うんだよ、味が。  こーゆー穴場を知ってるってとこが、やっぱりオトナって感じがする。 「ねえ、圭輔さん。俺もビール飲みたい」 「ダーメ。おまえまだ未成年だろ」 「あと三ヶ月で二十歳」 「じゃあ、あと三ヶ月我慢しろ」 「ちぇ」  その未成年に手をだそうとしてるのはどこのどいつだ。  まったく、変なとこが真面目だよな。  唇を尖らせて、烏龍茶のグラスをちびちびと舐めると、圭輔は笑いながらビールの入ったグラスを傾けた。 「三ヶ月経ったら飲みにつれてってやるよ」 「んー」 「だからそれまでは大人しく俺の側にいなさい?」  できればずっとな?と付け足された言葉に、おもわずゴホッと咽ると、圭輔は相変わらずの男前の顔でケラケラと笑った。
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