#002

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「・・・・そーゆーこといわんでください」 「ん?ドキドキしちゃう?」 「じゃなくてー・・・・」  ドキドキっていうより、ゾクッとするっつーの。  俺の嫌そうな顔を見て、圭輔はさらに愉快そうに笑った。  俺の反応を見てたのしんでる節があるのは重々わかってはいるんだけど、なんせこっちはソッチの世界に関してはド素人だ。  そーゆー性質の悪い冗談をいわれるたびに、狼狽えてしまうのは圭輔の思うツボなんだろうなあ、とも思うんだけど。  というか、冗談なのか本気なのかいまいち掴めないところが地味に恐かったり・・・・。 「男同士ってのは、こーゆーとき不便だよなあ」 「は?」 「女相手だったら、既成事実作っちまえばさっさと自分のモンにできるけど、 男ってのはどうがんばったって種植えつけられねえだろ?」 「ブハッ!」  なんちゅーことをいいだすんだ、この男・・・・。  おもわず烏龍茶を吹き出した俺を見て、圭輔は「汚ねぇなー」と呆れた顔をしながらおしぼりを投げてよこした。  ってゆーか、誰のせいだよ、誰の。  ゴホゴホと咽ながら、おしぼりでテーブルを拭きつつ恨めしげに圭輔を見上げてみても、 当の本人は自分の発言の問題点にはまったくもって気づいていないらしい。  アレか?俺が過敏になりすぎてるだけなのか?  しかし、既成事実って・・・・。  あんまり深く訊かないほうがいいよな、絶対。 「雅通、まだ肉残ってンぞ。おまえ烏龍茶でいい?それともジュース?」 「いや、烏龍茶で・・・・」 「オネーサン、生と烏龍追加ねー」  空になったジョッキを片手に、圭輔が威勢のイイ声を出すと、ほどなくして新しいグラスがテーブルに置かれた。  とりあえず呼吸を整えるために新しい烏龍茶に口をつけると、圭輔はジョッキを片手に網の上の肉を器用にひっくり返している。  そして、焼きあがった肉を、次々と俺の皿に放り込んでいる。
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