ウィング。

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ウィング。

「情報屋ぁ!!!お前…お前えええ!!代々俺の一族が受け継いできた店をよくもぉ!!」 薄緑がかった肌に、尖った耳。 額に生えた大きな角と、怒りで瞳孔の開いた真っ赤な瞳。 明らかに人間ではない種族の大男が声を荒げて街を歩いていた華奢な金髪の少年にいきなり殴りかかった。 周りからは悲鳴が上がったが、通りを横切ってレンガ張りの建物の壁まで吹っ飛んだ金髪の少年に駆け寄って心配する者はいなかった。その金髪の少年は壁にもたれかかるようにして、動かない。 「お前が他の店に俺たちの技術を売っちまったから!! 俺たちの店は潰れちまったんだよ!!!」 肩を怒らせ、紅潮した顔で仁王立をする大男が叫んだ。 金髪の彼がゆっくりと顔を上げる。唇の端が切れて襟のあるシャツに血が滴っている。 「いってーなぁ、弱小種族の人間殴んなし」 不満と苛立ちが入った彼の声に、大男の怒りがいよいよ最高潮に達した。
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