ホンとにほしかったもののお話。

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 ここにある本は、どれもかれも研究資料ばかりで、料理本のような類なものは今まで見たことがなかった。機械に関する資料が多く見られたことから、きっと彼女を作った人間の物なのだろうということはなんとなく予想出来た。  けど、もし彼女を作った人間の物ならば、  なぜその人物はここにいない。  なぜ、あの料理本はあそこまでボロボロなのだ。  モヤモヤとする思考に、落ち着くことが出来ず体を動かしたのがいけなかった。肩が近くの小さな塔に当たってしまい、その上から一冊の本が落ちた。慌てて手を伸ばしたが遅かった。  あちゃー、と顔を手でおおいながら少女の方を見ると、案の定、顔をあげて此方を見ている少女と目があった。なんて言おうかと言葉を迷っていると、少女が不思議そうに数回瞬きをした後、とても嬉しそうな笑みをその顔に浮かべた。  それに此方が驚いていると、少女が口を動かしたのが見えた。よくわからずに首を捻れば、少しの間を空けてから再び少女が口を動かした。 おかえりなさい――そう、その口は告げた。 「……」  ただいまと、口からすぐに出て来なかった。代わりに、小さく息を飲み込んだ。  ――ただいま。
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