我は何処に在り

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 機械化は順番に行われた。まずは両足。次に両手。数十年前ならともかく、今はナノテクノロジーと医療用義手・義足が十二分に発達し、成熟した、人類の黄金期とも言える時代だ。それらの手術は滞りなく遂行され、私は未だ自分が自我を持ち続けていることに自信を抱きつつ、毎日、手帳へ「我はここに在り」と記した。  そう、両手や両足は只のツールだ。そこに自我が宿るとは考えにくい。本命は恐らく――いや、やめておこう。まだその時ではない。
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