双子岩

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双子岩

 挑戦する、と僕が口にした時、彼の第一声はこうだった。 「止めておきなよ」  なんて奴だ、と思ったものだ。一念発起した者に対して、その一言は無いんじゃないか? 「でも、何が起きるか分からないんだろ? 戻ってきた奴は居ないって聞いたぜ」  だからこそ価値があるんだ、と僕は言った。誰も知らない場所。誰も見たことが無い場所。それは転じて、誰もが恐れる場所ということだ。だからこそ、挑む者は勇者とされる。皆と違う、特別な存在になれるのだ。 「生まれた以上、僕は皆と違う存在になりたい」 「違わなくたっていいじゃないか。平々凡々な中にこそ、幸せはあるってもんさ」 「他の皆はそうかもしれない。でも、僕の幸せはそこには無い」
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