ある春の日に、編 7 サムシングブルー

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『拝啓、藤志乃英次様、凪様  ご無沙汰しております。九十九清二です。今、私はイタリアで舞台の仕事をしているため、そちらにはどうしても行けなく、こうして電報にてお祝いの言葉を述べさせていただきました。  本当に本当におめでとうございます。  今日という日が、二人に幸せの雨を降らせますように。  これからの毎日が、お二人にとって、幸せ溢れる日々でありますように。  心から願っております。  最後になりましたが、凪君、あの約束、頑張っています。いつか必ず実現させましょう。  九十九清二』  すっごーい人なんだよ? この前まで一緒に仕事してたんだ。舞台を一緒に作ったんだ。たくさん勉強になった。  最初はさ、なんかヤな感じって思ったけど、違った。自分では納得ができない作品、けど、大勢が関わっていることで変わってしまう色んなもんを自分なりに折り合いつけて飲み込んで、けどやっぱ、そうじゃないって葛藤を繰り返して繰り返してた。けどその作品を皆が大絶賛する。よかったよかったと褒め称える。自分がダメなのか、それともみんなが嘘をついてるのか、わかんなくなって回りが皆嘘をついているように見えてただけなんだ。自分のことを疑ってしまって険しい表情になってただけなんだ。  今はすごく可愛い人だなって思うよ。仲良しなんて言ったら周囲は笑いそうだけど、本当に仲のいい友だちだ。年上だけど、舞台の話をし出すと本当に止まんなくて、英次が入ってくれないと朝までつき合わされちゃうくらい、舞台を愛してる人だよ。 「凪―! こっち向いて!」 「あ、はいっ」  会社の人たちはよくしてくれる。大変だけど、頑張ってる。 「英次さーん! おめでとうございます!」  アステリの時に英次が育てたモデルさんたちはそれぞれの道を進んでる。今ね、朝ドラに英次が育てた人が準主役出てるよ。テレビって天国からでも見えるかな。 「はーい! じゃあ、二人笑って!」  お父さん、お母さん。 「はーい!」  俺は、今日、英次さんと結婚式を挙げたんだよ。
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