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けっこう、不幸な境遇――なのかもしれない。
十七の時に両親を火事で失った。高校二年の夏、部活の合宿の最中に電話があって、そんで顧問の先生に色々してもらって慌てて帰ったんだけど、もう家は真っ黒な炭になっていた。お父さんも、お母さんも、そうなってた。
あの日が俺の人生最悪の日だった。
だから、もう、俺に最悪のことなんて起きない。そう思えるようになったのは、両親の一周忌をすぎてからだった。
「あっぶねっ!」
慌てて階段を駆け下りてたら、少しよろけかけたけど、そのまま俺は足を止めることなく校舎を飛び出す。俺の人生において、最悪の日はもうすでに終わってる。あの日以上に最悪のことはもう起きない。これからはきっと良いことが待っている。そして、今、俺は、その良いことに向かって、全速力で走ってる。
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