第1章

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ある朝、琴音は父親が轢かれた猫を慣れた様子で片手でつまみ上げ、向かい側のおじさんに「これ、お宅のですか?」と聞いている場面に出くわした。 おじさんもまた慣れた様子で「あ、そうです」と答える。 それはちょっとした落とし物のやり取りのようで、父親の手からおじさんへと手渡されるだらんとその物体もまた、まるでただのズタ袋のようであった。 その光景に幼かった琴音はショックを受けたが、同時にようやくその「なにか」の正体を知った。 長い腸を腹からはみ出させ顔が半分潰れているも、それはれっきとしたネコなのであった。
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