第1章

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琴子は小学校に上がると、そのゴミ捨て場前を通学路とすることとなった。 今より、野良犬も野良猫も多い時代である。 多くの黄色い通学帽を被った小学生が歩く通学路の傍らで、色々な死体が朽ちていった。ある時は犬であり、ある時は猫であり、ある時は狸であった死体は、皆一様に臓器をばら蒔き、溶かし、徐々に体が萎み、原型をなくして土へと還っていった。 そして暫くするとぼんやりとその場へと戻ってきて、悲しげな瞳で虚空を見つめるのである。 肉体から押し出された魂が、こうしてここに戻ってきているのだろう、と琴音は考えた。肉体は土へと還れるが、魂には戻る場所がないのかもしれない。だから皆一様に、飼い主を待つ捨て猫や捨て犬のような瞳をしているのだろう…と。
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