第1章

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そんな昔のことをぼんやりと思い返しながら、琴音はゴミ捨て場の前を通りすぎた。 急にこんなことを思い出したのは、あの日と同じような、この日差しのせいだろうか…。 大学で家を出て以降はたまに実家に帰ってきてもお客さん然と室内でグータラしているだけなので、このゴミ捨て場のことを思い出すことはなかった。 小さい頃は気味が悪く墓標のように見えていたゴミ捨て場も、光の中じっと佇むただの古ぼけたただのゴミ収集庫であった。勿論、黒い染みも、靄も見当たらない。 あるいはあれは、幼く多感な少女の脳が産み出した幻だったのかもしれない。
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