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第3話 お目付役
「来夏~見た?見た?人事速報!!」
同じ営業本部に配属されていた菜水が私の席まで来る。
そして私の袖をひっぱって打ち合わせカフェコーナーまで連れてくる。
今は営業本部の先輩たちはほとんどが営業に出ているので
カフェコーナーもひっそりしている。
「あ・・菜水・・課長昇進おめでとう。」
「あんなみえすいた人事。まさにこの結婚は政略結婚だって公表しているようなもんよね。
どうせなら、営業課長とかにしてくれたらバリバリ仕事できたのに。
総務課は、次長やら、担当課長やらがたくさんいるから私の課長職なんてお飾りなんだから。
逆に腹がたってくるわ・・・・」
そう学生時代から成績優秀だった菜水が、いくら宮坂コンチェルトの娘だからって、副社長と結婚して専業主婦になるのはちょっとこの企業的にももったいない気がする。
「それより、来夏。潤哉のお目付け役よろしくね♪」
「え・・?」
一瞬菜水の言っていることがわからない。。。。
「潤哉の遊び相手に対するお目付け役お願い。実はね、今の秘書とできてるの。五十嵐っていったかな?あの派手な下品な女と。
っていっても潤哉のお遊び相手の一人なんだけど。一応婚約したのに秘書とそのままの関係ずるずるって
なんか婚約者の私もみじめに見えちゃうでしょう?周りから。だから潤哉の秘書をお願いしたいんだよね。
こんなこと頼めるの親友の来夏しかいないから」
親友・・・
親友って言葉は口に出すとものすごく安っぽく聞こえるのは私だけだろうか?
「とりあえず、五十嵐は営業支援サポートで、神奈川支部に異動させたから。あとはよろしくね。」
「よろしくって何を?」
おもわずあんぐりと口をあけてしまう。我ながら情けない。菜水の思考回路についていけない。
「そうね。変な虫が潤哉につかないようにってか。まぁ3年間は、お互いの恋愛には口出ししない約束だからどこの女と遊んでも構わないんだけど。五十嵐はちょっと私が生理的に苦手だから。
ああいう安っぽい女が近づかないように。かな」
というと菜水は、意地悪く微笑んだ。
「菜水は、その、副社長と結婚するけど・・・今現在は副社長の事どう思っているの?」
菜水は私のふいの質問にびっくりしたような顔をする。
「好きでも嫌いでもない。今は考えたくない!あと3年間の自由を大切にしたいって感じかな」
というと先程とは違う遠い目をした。
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