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プロローグ
全身に力が入らない。激しい運動をした後、ゆっくり食事をして、お風呂で疲れをほぐしたけど、翌朝起きたら全身に気怠さが残っているような感覚だった。
ああダルい。もう少し寝ていたい。意識を手放そうとして微かな記憶の片隅に過った残像が、眠りの渦にのまれそうになっていたわたしを一気に引き上げた。
学校内にある古池に落ちた。このまま泥水の中で寝たら溺死してしまう状態だったはずなのに。優しく凪いだ風が頬に当たった。
……あれ?風が吹いてる。
必死に開かない目に力を入れてこじ開けた。ゆっくりと、うつ伏せで寝ていた体を起こす。
此処は、どこ?
ひんやりとした土と木々の幹や雑草で視界を遮られている。吹き抜けた風は息吹く大地の匂い。喧騒とした物音が聞こえない静寂な空気を纏っていた。
遠くで川のせせらぎや、木々の葉が揺れる音が心地よい。鳥のさえずりや獣の遠吠えに似た鳴き声が聞こえる。周囲を見回してみても、アスファルトの床も、落ちた校庭の池やスタイリッシュな校舎も、自転車置き場の青い屋根も見えない。
これは、夢!?
全身の疲労と空腹で、再び地面に身を投げてしまった。歩くどころか起き上がれない。戸外で横たわるだなんて貧血の時以来だ。
「どうした、動けないのか」
突然現れた男性の声に安心して、意識を手放してしまった。
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