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「トーマ。予定より遅くなって、ごめんなさい」
「大丈夫ですよ。後程迎えに参ります」
ギルドカードのメールを師匠へ送った。
【師匠へ。初めての王都は観光地を訪れたみたいです。ギルドカードの結果を予想されていましたか?ギルドマスターが称号をお認め下さり、無事調合師として師匠の元に帰れます。森では遭遇できなかった聖獣と出逢いました。プラチナの瞳と灰色の体躯をした狼です。愛称をアルスといいます。ギルドより5万ソルをいただきましたので、念願の着替えを購入するつもりです。福子】
思ったより早く、返信がきた。
【福子へ。明日以降に買い物を頼む。添付資料参照してくれ。カシャの容量が8割になった時点で一度帰って来い。アルスは地を駆ける獣の長。召喚獣はCにランクアップしなければアルス一体しか維持出来ぬ】
簡潔なメールが師匠らしい。
添付資料には大量の薬品用の瓶や薬品の材料や食材が書いてあり、店の地図やルートまで丁寧に印されていた。森で手に入らない材料もあるし、薬品用の容器は森で採取する木の実を洗浄乾燥させて使用するが、中には適さないものもある。
明日は宿舎を探さなきゃ。確かにギルドカードって便利だけど、森では意味がないかもしれない。地図は大まかな場所しか表示されないし、辞書を開いても基本的な魔獣や植物の種類しか載っていないので、必要な情報がなければ仕方ない。
「アルスって何を食べるの?」
「出されれば何でも喰うが、本来は“気”が満ちていれば食べない。水は浄化されていなければ口にしないが、様々な場所の水を飲むのが好きでな。最古の森は最高級だな。ククククク…」
「よかった。森の水がダメならどうしようかと思った。時々撫でてもいい?」
「ああ」
「ふふっ。もふもふ」
「そこ、くすぐったい」
「尻尾サイコー。ふふっ」
つぶらな瞳がかわいいけど、契約した時に脳裏に焼きついた本来の姿はキレイでカッコいい。
変幻させた今の姿でも、尻尾の大きさで仲間内ではバレちゃうらしい。
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