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舞踏会は宮殿で開催された。様々な色のマントを着た人たちが溢れている。
「福子。踊ってくれないか」
右腕を差し出したのは、真紅のマントが眩しいサンダーだった。
王族の使者と聞いていたのに、頭に被った王冠は王族の証だと思うんだけど?ああもう悪戯にキラキラ光る様子を見たら許すしかない。
「身に余る光栄に御座います」
目立つのがイヤなので、やんわり断ろうとしたけど、突き刺さるようなトーマや周囲の視線が痛い。
覚悟を決めてサンダーの手に右手を重ねると、音楽に合わせて足を動かした。
「ククク…注目されるのは嫌か。踊れるのに壁の花とはもったいないだろう」
「踊れるのは昨夜特訓してくれた師匠のおかげです。それより王子様なんですよね?」
「まぁな。王位継承は第12番目だがな」
うーん。あからさまに順位が周知されている事実に困惑する。
「どうお応えしたらいいのかわかりません」
「アハハハハ!」
ひいぃっ!至近距離の状況で、その笑顔は反則!ほら、みんながギョッとして見てる。
「そのマントはあいつからだろ。表はあいつの色で裏は福子の色だな。よく似合うよ」
渋い紫色に銀色の珠飾りが夜露のようにキラキラしていて、内側は深い緑色に金色の縁飾り。リバーシブルのデザインで、いつもと逆を表にしていた。
「ありがとうございます。オレオルの光輝くマントは、サンダー様…イタッ!」
サンダーが耳を引っ張った。
「サンダー様なんて言うから」
「王族の方を呼び捨てできません」
「福子は変わってるな」
変わってる?
「敬称を付けるなと言えば、大抵の者は喜ぶがな。皆がいないときや、誰にも聞こえない時はサンダーでいい」
「わかりました」
「で?ギルドで暴れたんだって?」
「うっ。牽制しただけです。トーマにお世話になりました」
「あいつの隠れファン多いぞ。気をつけろよ」
「はい。サンダーのファンも多いですよね。わたし諸々大丈夫でしょうか?」
「ブハハハハ!!」
えーん。サンダーが爆笑すると、視線が集まってしまう。悪循環かもしれない。
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