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舞踏会が佳境を迎えた。ステージに見覚えある制服の集団が登場した。
福子が通っていた同じ制服の男4人女5人の生徒たちはネクタイの色が違うので3年生だろう。見知った顔はいない。実行委員会の人が全員いるのではなく、偶然登校していた生徒たちかもしれない。
チアキやポールも興味深くステージを見ている。
王様の側近ではなく、異世界人の世話係の者が、舞踏会の参加者全員に話を始めた。
「人手不足の方に朗報です。約半年前にやって来た異世界人9名です。インフィニティについて学んで知識を得ましたが未だギルド受注経験はありません。
魔力はF若しくはE。属性は未測定。スキルは言語翻訳ですので、意思疎通は可能です。ギルドへ通達する前に引き受けていただける方はいらっしゃいませんか」
何かぎこちない。渡された台本を読んでいるみたい。
そういえばサンダーが「福子と似た服装をした男女の異世界人が滞在しているが、未だに独り立ち出来なくて困っている」と愚痴っていた。
冒険者より奉公するほうが安全だから会見したのだろう。引き受け人がいれば、独自の技術や専門知識を一から経験できるし、将来独立も可能だ。
「引き受けることで報奨金はいただけますか」
「はい。一人につき10万ソルです」
稼ぎ頭にならなければ奉仕と同じ。引き受ける者は現れなかった。
「では冒険者として新人ギルドに幾つか分かれて登録致します。皆様あたたかな応援を何卒宜しくお願い致します」
「ええっ!?」
半ば強制な独り立ちのため動揺する姿が見られた。突然インフィニティに来たことは衝撃だけど、何もしなければ生活できなかった福子とは待遇がかなり違っていたようだ。
「わたしや福子と同年代で、マントを着用しない者は半人前よ。誰が厄介ごとを引き受ける奇特な方がいるかしらね」
辛辣な言い方だけど、チアキは正しいと思ってしまった。師匠の傍に居られたが、この半年間はとても大変だったから。
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