前編

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人気がない場所まで来ると、サンダーがヤレヤレと肩を落とした。 「福子。頼むから自重してくれよ。貴族と関わるとロクなことはない。ロズワード家以外はシカトしとけ、シ、カ、ト」 挨拶だけして、相手をせずにスルーすればいいのかな? 「助けて頂いてありがとうございます?」 「おいおい。自分の立場をわかってないだろう?」 「すみません」 サンダーは口を押さえて笑いを堪えていたトーマをジロリと睨んだ。 「噂を流されたほうが解決早いからノッたんだが、トーマからも竜樹にフォローしろよ?逆鱗に触れれば俺が竜樹に殺されるんだからな!」 物騒な言い方のサンダーに、トーマは真剣な表情で頷いた。 「承知してます。あの御方は冗談は通じませんので。キャンベル家の接触をメールしておきます」 ねぇ師匠、サンダーやトーマとはお友達なんだよね?一方的に恐れられてマスよー。 「噂って?」 「福子がサンダー様の夜のお相手という噂ですよ」 ええっ!?そういうこと? 「フッ。福子もまだまだ若いな?照れちゃって」 「サンダー様?」 トーマが福子の代わりにたしなめた。 「はいはい」 肩を竦めながらも、ニヤニヤしてる。 「ただ師匠の逆鱗には触れないと思います」 「わかってないな福子。おっと……」 言いかけた言葉を飲み込んだ。 「ま、今夜は俺の客間で休んで貰うからな?」 「ごめんなさい」 「謝るなよ。さ、行くぞ」 「その色気だだ漏れ状態は止めてください」 「無理。人前でキスしないだけマシだと思えよ」 肩を震わせて笑うトーマに一撃してから、サンダーの自室に向かった。 ちなみにサンダーの部屋にある、使用人が寝泊まりする一室を使わせてくれた。 「おやすみ福子」 「おやすみなさい」 絢爛な部屋の片隅だと眠れないかもしれないとおもったが、杞憂に終わった。 アルスのぬくもりに委ねて、すぐに寝入った。
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