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翌朝。奥にある応接間のスペースで座り心地のいいソファーに座っていた。
「サンダーおはようございます」
「おはよう福子」
サンダーがベルを鳴らした。
執事がワゴン車に乗せて運んできたのは朝食だ。ポンの実やスープ、魔獣の肉や魚を焼いたもの。サラダや卵、果物をテーブルに並べていく。紅茶やミルク、ジュースまである。
「美味しそう」
「アップルパイの礼だ。寛いでくれ」
「ありがとうございます」
わたしたちは、暫く朝食に没頭していたが、サンダーがジュースを飲み干して話を始めた。
「福子以外の異世界人が、よくわからない。オーブやインフィニティのことを学ぶことは積極的だったが行動力が伴わないんだ。参考になることがあれば各ギルドへ通達したい。ま、竜樹からも報告を受けたが、食の水準が高いのは今の福子を見ても理解できる。遠慮がないからな?ハハハハ…」
赤面した福子を見て笑うサンダーはイジワルだ。わたしってば躊躇わずパクパク食べちゃってた。
どう話したらいいのか、頭の中で整理してから話し出した。
「わたしたちが住んでいたのは争いのない国で、銃や剣を持たずに生活できます。魔力も魔法もありません。近代科学が発達した機械化が進んだ世界。貧富の差はありますが、わたしたちの年代の者は家族が衣食住を確保します。狩りをしなくても薪を集めなくても、鍛練しなくても魔法を学ばなくても生きていけます。自ら行動する必要がないのです」
サンダーはゆっくりと頷いた。
「行動する必要がないとは凄い世界だ。衣食住を各自で確保することを教えなきゃならないとはメンドーだな、まったく。魔力もランクも低い。カシャの容量も少ない。努力もしない。半年間が無駄とは。
揃いの制服だけを盾に、客人として暮らしてきた異世界人たちは同じ立場の福子が独立していたら、言い訳できなくなる上、後押しになるかな?」
「わかりませんが、試す価値はあります」
暫く雑談をしていたが、サンダーが天井を仰ぎつつ両手を上げてグッと伸びをした。
「よし。福子も協力してくれるかい」
「勿論です」
異世界人と呼ばれるのは当然だし、同じ立場なのは認識してる。なるべく関わりたくないけど、仕方ないと割り切った。
サンダーやトーマと一緒に、各ギルドへ引継をする際、立ち会うことになった。
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