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王族が住む城“王宮”に隣接する建物に馬車が横付けになった。
「福子、お部屋にご案内いたしますね。サンダー様、後程」
「ああ。福子、また後でな」
その場でサンダーと別れたが、彼の両脇と背後には護衛の騎士たちが素早く配置していた。
「突き当たりの階段を上がります」
「はい」
細長い廊下の左右にドアが幾つも連なる。その一番奥のドアの前に立った。
「この部屋を自由にお使いください」
どうやら客間を用意して頂いたらしい。ソファーやベット、衣装ダンスや鏡台があり、頭上の小さな窓からは日差しが降り注いでいる。
「素敵な部屋ですね」
「ありがとうございます。何かございましたらこのベルを鳴らしてください。ひとまず休憩なさってから、ギルドへご案内いたします」
「トーマ、ありがとう」
「福子ごゆっくり」
ソファーに座り、水筒を取り出してホッと一息。初めて馬車に乗ったので、緊張していたのかもしれない。ぼんやり窓の景色を見ていた。
太陽ではない光。太陽と似ている星。頭上で照らす存在を“オレオル”が輝いている。
インフィニティは、朝昼夜が各10時間で1日30時間の世界。1ヶ月の単位が50日間、半年が250日間、1年が500日間である。オレオルは正確な時間を刻む役割もあり、一瞬で朝から昼、昼から夜、夜から朝へとチェンジする。
また、インフィニティは3つの領土が存在する。
オーブ国。今、福子がいる場所は大地と水の国。インフィニティ領土の7割を占める中央の国で、人族が繁栄している。オーブ内には幾つかのギルドが存在しているが、県の規模と解釈すれば解りやすいかもしれない。
シャイン国。南にある陽光と炎の国で、岩石と砂漠で覆われている。
ブルーム国。北にある氷雪と闇の国で、氷河と霜で覆われている。
シャインもブルームも、人外しか生存していない。各国を司る神の化身が存在するらしいが、実在しているかどうかは謎に包まれているという。
インフィニティの知識を復習しながら、師匠が教えてくれたことが、昨日のことのように思えた。
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