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田辺家の隣に住む家へと足を運ぶ。呼び鈴を鳴らすと、すぐに中年女性が顔を覗かせる。
「なんでしょうか?」
「すみません、お隣の家なんですけど……あれは田辺さん宅で間違いありませんよね? ここの住所の……」
送り先伝票を見せながら訊ねてみる。すると女性は眉根を寄せながらボソリと呟く。
「……警察の人?」
警察? なぜにそんな事を?
「いや、警察ではないんですけど……ちょっと田辺さんに用事があって」
「待っても無駄ですよ。もうじき家の中にある物も全て処理されるんじゃないかしら」
「どういう事ですか?」
年配女性は溜め息をもらしながら、心底迷惑といった感じで話し始めた。
「娘さんが1人いらっしゃったんだけど、色々あってね……奥さん、元々おかしな宗教に熱心だったりしてたんだけど、あの一件があってから更に様子がおかしくなっちゃって、行方がわからなくなっているのよ」
「行方が……分からない?」
「時折、警察とかも事情を聞きにやってきたりしてたわ。そこでピンときたの。あぁ、あの奥さん死んじゃったんだって」
(病室で会った、あのお母さんが……死んだ……?!)
宗教に絡んでいるという事は、ヤマさんも言っていた事である。ふと目線をヤマさんに向けると、彼は無言のままコクリと頷く。
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