十八

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 今日も暑くなるのかな――わずかに雲が残る空を見上げる。 「あ、幻日……」  見上げた東の空に、五色の光が煌いていた。  「生きてりゃ、きっと会える」――叶わぬ夢となってしまった。  過ぎてしまえば、あの日々こそが夢だったのではないかとすら思う時がある。でも、夢じゃないことは確かなのだ。  並んで幻日を見上げたあの日を思い出す。ぎゅっと握り返した、あの手の感覚も憶えている。    幸せになれたかと聞かれたら、難しい。  結局、鉄之助もハツも、上手く生き損ねたのかも知れない。  ――それでもいい。自分の足で歩いたんだ。 「ね、空から見ていて。あたしも最後まで頑張るからさ」  幻日は、遠い夢のように、輝いて消えた。  ◇完◇
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