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ジンを見据えたままじっと佇むロイ。
その先に動く獲物が居るのではと注視しているかのようである。
(やはり、止まっている者が見えていないんだな。だがどうする事も出来ねぇ)
極度の緊張により、手に持つ銃が汗にまみれていた。
(くそ、この状況が続けば俺は何かしらのヘマをするだろう。汗で滑らせて銃を落とすか、体勢に疲れ動いてしまうか。何か打破する術は無いのか……)
必死に考えを巡らし、窮地を脱する手段を模索する。
だが動けば死に、動かなくてもいずれ死ぬ事があまりにも明確で、完全に詰んでいる気がしていた。
(ほんの少し、ほんの少しでいい。俺から意識を外せ。ここに俺は居ないんだよ! あっち向きやがれ!)
ジンはロイの意識が外れる事を別の何かに期待した。
絶望の中に淡い期待を込め。
その時、ジンを見据える化け物がトーナの方向を向いた。
(よし! 今だ!)
それに合わせ、ジンは銃を少し上げた。
一発の銃声が高らかに鳴り響く。
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