納得していて、していない日常。

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 洋樹の浮気を知る前は、洋樹との結婚も真剣に考えていた。  一方の洋樹は、浮気をするくらいだから、私との結婚など考えていなかっただろうし、『俺はまだ遊びたい』といった空気も発していた。  重い女になってはいけないと『結婚したい』などとは口にしなかった。でも、地元の友達の結婚式に出席した時に『結婚式、素敵だったよ』とか、聞かれてもいない感想を言って匂わせたりはしていた。  私が結婚したがっていたことに、洋樹も感付いていたと思う。だけど、洋樹は『へぇー』としか言わず、『関心がありません』と言った態度を取っていた。  それでもいつか、洋樹と。  そう思っていたけれど、最近そんな気持ちもなくなった。  結婚をしたくないわけじゃない。だけど、したいわけでもない。結婚を諦めたということとも多分違う。  ただ、洋樹との結婚に、洋樹に、期待をしなくなったんだ。 『結婚』という文字に、何も感じなくなった。  結婚式のCMを見ても、お店に飾られているウエディングドレスを見ても、『あぁ、綺麗だな』としか思わなくなった。自分の結婚式を、結婚を、想像することがなくなった。    時々、洋樹とこのまま付き合っていて良いのかなと考えたりする。  浮気をされたけれど、洋樹を嫌いになれなかった。だから、別れる理由がない。  だけど、浮気をされたことがずっと引っかかったままの私といて、洋樹は楽しいのだろうか。  結婚をしたがらなくなった私は、逆に付き合いやすいのだろうか。  浮気をされる前の様な愛情を注げなくなった私から洋樹の心が離れて、洋樹から別れを告げられたとしたら、私は『別れたくない』と泣くのだろうか。それとも、『分かった』と言って今度こそ別れを選ぶのだろうか。  分からない。
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