正解と信じていた、不正解。

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 -------洋樹と口論になってから1週間が経った。  この間、洋樹は私のアパートに1度も来ていない。  洋樹が浮気をしてから、罪悪感からか、ケンカになってもいつも洋樹が折れてくれていた。  こんなにケンカが長引いたことはなかった。  パソコン越しにいつも通りに働く洋樹を見ながら、ふと『私たちは、このまま終わっていくのだろうか』と考える。  それで良いのだろうか。  洋樹を許せないのに別れないのは、いつか洋樹を許せる自分になれると願っていたから。洋樹を信じることが出来ていた自分に、きっと戻れると信じていたから。  いつか、きっと。 『いつか』って、いつなんだろう。  洋樹も私も、許されることに、許すことに努力をしているのに。 『きっと』という言葉は希望でしかなく、確約されている事柄など1つもない。 『はぁ』溜息を一つ吐き、視線をパソコンに戻すと、メール受信通知が来ていることに気付いた。  送信者は、洋樹。  マウスを動かし、メールを開く。 【今日、家に行ってもいい?】  洋樹は私と、仲直りしたいと思っているのだろうか。それとも、別れ話をするつもりなのだろうか。 【いいよ】  短い返事を返す。  洋樹のテンションが分からない為、『何か食べたいものある? 作るよ』的な文章を付け加えることが出来なかった。  今日、私たちはどんな話をするのだろうか。
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