素直で我儘な、大人たち。

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 翌日、会社を休み、空港の人ごみの中で洋樹を探す。  昨日、『明日空港で会いたい』とLINEしようかと思ったが、プロポーズを断ったあの日から、会社で目を合わす事さえしなくなった為、理由をつけて断られたり、飛行機の時間を変更されたりなんかしたらショックが大きいなと思い、当日探し出す作戦に出た。……が、人が多すぎてなかなか洋樹を発見出来ない。 「洋樹!! 洋樹!!」  洋樹の名前を呼びながら、四方八方を見渡していると、 「迷子を捜してるお母さんみたいになってるぞ、日花里」  後ろから誰かに腕を掴まれた。 「洋樹!!」  振り返ると、しょっぱい顔をした洋樹が呆れた目をしながら私を見下ろしていた。 「……何しに来たんだよ。日花里の顔、見るの辛くて送別会さえ断ったっていうのに……鬼かよ、お前は」 「洋樹に会いに来た。話したいことがあるの」  洋樹の顔を見上げる。ちゃんと洋樹の顔を見るのは久々で、何となく感じる懐かしさが切ない。
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