仮想世界の修正作業

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「それで、剣士に渡された紙にはなんて書いてあったの?」 「『なんても何も、危険区域に行くための契約書とその区域の注意事項が書かれてるだけだ』」 「そう?ならいいんだけど。それより、剣士ってばずいぶん役所の人に信頼されてたみたいだけど、本当にただの剣士?」 「『痛いとこつくなぁ。まぁ、でも、魔法使いと相棒になる前は別の職業をやってただ』」 魔法使いの問いに、剣士は持っている紙に力を入れて応えた。 魔法使いにとっては純粋な質問のつもりなのだろうが、剣士にとっては心を抉るものに等しい。 『勇者様、どうか、どうかあの魔物を倒し、この世界を平和に……みなが笑顔で暮らせる世界にしてください』 ふと目を閉じるとその時のやりとりが脳裏に焼き付いた映像として流れ出す。 そう、剣士になる前は、この世界を平和にするための職業、勇者だったのだ。 「ふーん、剣士って剣士以外にも職業やってたんだ。私も魔法使いになる前は別の職業だったし、職業変えるのってあんまり珍しくないのね」 「『魔法使いも?』」 「うん。と言っても、前の職業をやってた時はこーんな小さい頃だったからあんまり覚えてないんだけどね。今となっては相棒もいるし、充実してるから変えてよかったって思ってるわ」 魔法使いは何かを思い出そうと考えていたが、十年以上前の記憶はだいぶ薄れているらしい。 「『魔法使いに相棒って言われると変な響きだな。普通こういう世界を過ごすなら別の職業の人との交流があってもいいはずなんだけど』」 「私達がはぐれてるっていいたいの?そうね、確かにこのまま二人だけで物語こなしてくのもつまらないし、力のバランスってのも大事よね」 「『この世界に来て数年で言う内容じゃないな』」 剣士がため息混じりに言うと、魔法使いは「それほど二人で一つ態勢でこなしてきたってことよ」としたり顔で返す。 「『それもそだな。でも、今回の件は二人だけじゃ難しいから協力してくれそうな仲間も探すぞ』」 剣士ははいはい、と魔法使いの言葉をたしなめると地図を参考に歩き続ける。
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