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「それで、珠子の話って何だ?」
「ふむ。珠子が気絶しておる故、特別にわらわが伝えてやろう。珠子は数日間、いんたーねっとと言うもので色々と調べておった。しかし、わらわが成仏出来る決定的な手立ては見つからなくてのう。先ずは、わらわの現世への心残りを失くしてみようと決めたのじゃ」
それは輝も同じだった。必死に情報を掻き集めたが、珠子を元に戻す情報なんて見つからない。
「わらわの心残りは父の汚名を晴らせなかった事……そこで良い方法を思い付いたのじゃ。これを見るがよいぞ」
そう言って差し出されたのは珠子のスマホで、画面にはエブリスタジオと書かれている。それを見た輝の表情が青ざめた。
「こっ、これは……」
「小説投稿さいとと言う、書物が見れるものなんじゃろ? 紙を使わぬとは、ほんに四百年後は驚きの連続じゃ。時に、輝は書物を作成しているらしいのう」
「まっ、まさか……」
素直な珠子では絶対に有り得なかった、何かを企む表情が見て取れる。新鮮で可愛くも見えるが、それを心から感じる余裕などない。
「そう……真実を記した書物を作り、父上は最後まで信長公を守って戦い抜いたと国中の人に伝えるのじゃ! 現代の言葉だと、のんふぃくしょんと言うらしいの。頼んだぞ、輝!」
「はあっ!? ちょっと待てよ! 確かに趣味で小説を書いて携帯投稿サイトに応募してるけど、歴史を覆す程の影響を与える作品なんて俺には無理だぞ」
「このままでは無理じゃが、そこも考えておる。珠子に聞く限り、輝の作品が好きな『ふぁん』と呼ばれる者が三十人程いるではないか。つまり、輝には三十人の兵力があると考えられる」
いや、考えられないだろ!
「三十人か……お主、ショボいな」
ショボいとか言うな! そんな言葉を覚える前に常識を学べよ!
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