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遡る事数日前。
初夏の日差しが心地よく感じた珠子と輝は、学校帰りに家の近くの公園へと立ち寄った。これはデートだと輝が浮かれる横で、石段を下りていた珠子が足を踏み外し転げ落ちる。
「珠子! おい、大丈夫か!?」
驚いて駆け寄ると、聞き覚えの無い声が耳に飛び込んできた。
「痛たた……ここは何処じゃ……ん? なっ、なっ、なんじゃこれは!? この破廉恥な着物は貴様の仕業か!?」
「どうした? 頭を打ったのか?」
頭に触れると珠子は飛び退き、顔を真っ赤にして指差した。
「たわけい! わらわの問いに答えず髪に触れるとは、貴様は切腹じゃ! そこへなお……れ……あっ……あれ? 輝くん?」
「おいおい、大丈夫かよ。病院へ行くか?」
大丈夫だと言う足には擦り傷があり、痛々しく血が滲んでいる。珠子の奇行に不安はあったが、一先ず家に帰って消毒する事にした。
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