守るべき理由

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 何者かが勢いよく勝也の下へと迫る。明石は勝也の腕を放して、咄嗟に身を引いた。 「ト……トシ!」 「待たせたな、マツ。勝也、よく耐えてくれた。後は任せてくれ」 「トシ兄ちゃん……」 「これを頼む」  動けない勝也に何かを握らせ、利彦は立ち上がって秀樹の前へと進んだ。 「ここからは俺が相手をしよう」  見た目は変わらないが、口調の変化から怒りが見て取れる。それを牽制する様に、明石が横から睨み付けた。  明石に守られ、強気を取り戻した秀樹は不敵に笑う。 「フフッ……少し焦ったじゃないか。まあいい。お前、私の側近にならないか? 妹を差し出せば望みを叶えてやるぞ。だが、私に逆らえばとことん潰してやる。お前だけじゃない。低能な人間にこの意味が分かるか?」 「俺が従わなければ、退学させられる。それも、俺に味方した全員……そう言いたいのだろう?」 「ほう、少しは脳みそを使えるじゃないか。但し、ただ退学させるだけではないぞ。他の学校でも受け入れられない状態にしてやる。それでも私に逆らう馬鹿なのか?」 「馬鹿はお前だ! そう言って何人の生徒を騙してきたんだ? この学校はクリーンなイメージを前面に出している。次期理事長のお前がイメージを悪くして良い訳が無い。現理事長……つまり、お前の父親は息子の悪事を知らないな? マツを自由にしたければ、もっと父親の力を使ったやり方があったはずだ。だが、お前はクラスメイトの力を借りるなど、極力自分でやれる事しかしていない。恐らく、自由に出来るのは小銭で動く仲間と、横にいる男だけだ。お前自身が退学に追い込む力など無い!」  的を射た内容だったのだろう。秀樹の顔が見る見る赤くなって行く。
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