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「黙れ! 貴様を陥れるくらいは簡単だ。明石、こいつを動けなくしてやれ。但し、意識は失わせるな。妹の泣き叫ぶ声を聞かせてやる!」
「何処までも下衆で馬鹿な男だ。その台詞は、俺の言葉に間違いが無いと言っている様なものだぞ」
「黙れ、黙れ! 証拠は残さずに絶望を与えてやる! 明石、何をしている。早く行け!」
興奮する秀樹を横目に、明石は丁寧な口調で質問を投げ掛けた。
「……一つ質問しさせて下さい。勝也君は何をなさっているのですか?」
言葉を切ると同時に、明石は胸ポケットから金属製のボールペンを取り出して勝也の手元を狙う。ボールペンは勝也の握っていたスマートフォンに当たり、スマートフォンは部屋の隅へと弾き飛ばされてしまった。
「ああ、トシ兄ちゃんのスマホが!」
「やはり、一部始終を撮影していたのですね。動けない仲間に録画状態のスマホをそっと渡し、自分が陰になりバレない様に話を引き出す。その映像がSNSに流出して拡散すれば、秀樹さんの力でも揉み消すのは難しい。たった一つの情報で会社が傾く時代ですからね……」
赤くなっていた秀樹の顔が青ざめる。
「ご安心ください。勝也君は暫く動けません。小細工を弄するこの男を倒してから、ゆっくりとデータを消去しましょう。さあ、参りますよ」
不規則な動きで明石が襲い掛かる。利彦は攻撃をギリギリでかわして反撃に出た。
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