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才蔵を探していた輝たちだったが、何処を探しても見当たらない。
「怪しい気配は感じるのじゃが……何処かに隠れておるのかのう」
「そうは言っても、学校中を殆ど探したぜ。誰も可児先輩の姿を見てないって言うし……あっ! まだ探してない場所があった」
輝が走り出し、珠姫も後に続く。
向かった先は屋上。いつもは鍵がかかっているはずの扉が開いていた。
唾を飲み込み、ゆっくりと扉の先へ進む。その視線の先には、月明りに照らされ不気味に笑う才蔵の姿があった。
「すっかり日も落ちてしまったな。邪魔の入らない場所で待ってやったというのに、遅いではないか、池田輝。そして、明智珠子……いや、細川ガラシャと言うべきか?」
「なっ!? 何でそれを知っているんだ!」
驚く輝を押し退け、珠姫が前に出る。
「お主、あの可児才蔵……いや、可児吉長(かに よしなが)じゃな? またの名を笹の才蔵。宝蔵院流槍術の開祖で、わが父に仕えた事もある槍の名手であろう。輝、こやつもわらわと同じで別の魂を宿しておるぞ」
「ほう。そこまで知っているという事は、歴史の真実を知ってしまったのだな」
「そうじゃ! わが父の名を語って謀反を起こし、秀吉公に負けて父の首を差し出したのであろう!? 自らは地に隠れ、情勢を見て生き延び、槍の名手として今も名を残したのだな!?」
「クククッ……間違ってないぞ。他に聞きたい事はあるか? 無ければ私から質問させて貰おう。池田輝……お前がポケットに忍ばせている物は何処で手に入れた?」
才蔵が感じたのは魂を静めるネックレス。輝たちが宝石の気配を感じた様に、怪しい気配を放つネックレスの存在に気付いたのだろう。
そして才蔵は、利彦が言っていた内容を口にした。
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